イラク、徹底抗戦宣言　嘉手納から派兵　最大で８００人規模

　イラク政府は十八日、国営テレビを通じ、フセイン大統領と息子の四十八時間以内の国外亡命を求めたブッシュ米大統領の最後通告を拒否するとの声明を発表し、徹底抗戦を宣言した。

　米軍嘉手納基地報道部は十八日、同基地の第一八航空団からＦ１５戦闘部隊とともに最大八百人規模の兵員が、中東地域に派遣されていることを明らかにした。米軍のイラク攻撃直前とみられる現時点で、中東への在沖米軍基地から大規模な兵力展開が確認されたのは初めて。一方で同報道部は、配備されているＦ１５戦闘機の機数などについては「作戦上の理由で明らかにできない」としている。

　嘉手納基地のＦ１５部隊は、米本国部隊などとともに航空遠征軍を構成。イラク上空の飛行禁止区域の監視をはじめ、サウジアラビアの基地警備などのため、定期的に中東地域に派遣されている。　二月に任務を終了し嘉手納基地に帰還する予定だったが、イラク情勢の緊迫化を受け任期の無期限延長が決まった。　Ｆ１５部隊の配備に伴い整備や輸送、通信などにかかわる部隊が展開しているとみられる。

　米空軍は中東地域への戦力の集結とともに、世界的規模で配備計画が活発化しており、嘉手納基地のＦ１５戦闘部隊も、イラク攻撃に参加する可能性が極めて高くなった。

緊張漂う「基地の島」／不安募る周辺住民
全駐労、安全対策要請へ

　米国のイラク攻撃まで、残されたわずかな時間が刻々と過ぎる。県内の米軍基地は十八日、ゲートでのチェックが厳しくなるなど、じわり「臨戦」態勢を整えてきた。「出撃命令があれば、もちろん（イラクへ）行く」と決意を示す一方で、「罪のない人々を傷つけるのは間違っている」と戸惑う米兵。周辺の住民は経済的な打撃に不安を募らせた。基地の島沖縄は緊張感を高めている。

　金武町のキャンプ・ハンセン第一ゲート前にある新開地。買い物に来ていた海兵隊員（２０）は「９・１１のテロでおじを亡くした。テロは憎い」と言い、「出撃命令があれば、もちろん行く」とためらいはない。

　一緒にいた米兵（２０）も「イラクが始めたことを終わらせる必要がある。ブッシュ大統領を支えるためにベストを尽くす」と決意を話す。ただ、イラク攻撃に伴って一般住民への犠牲が出ることには「罪のない人々を傷つけるのは間違っているのでは…」と戸惑いを隠せない。

　観光で訪れた海野愛美さん（２０）は「ニュースを見ないので、イラクのことは分からない」と屈託がなかったが、「軍服の人たちにカメラを向けたら『撮るな』と言われた」と少し驚いた様子。

　米軍嘉手納基地。北谷町側の第一ゲートでは基地内へ入る車両の厳重なチェックが行われている。沖縄市側の第二ゲート近くで飲食店を営む店主は「攻撃が始まれば、米兵は外出を控え、商売に影響する。長期化すればどうなるか。一体、何のための戦争なのか」と訴えた。

　全駐労沖縄地区本部（兼次徳助委員長）は十八日午後、緊急の三役会議を開き、基地従業員の安全対策について那覇防衛施設局に申し入れることを決めた。

　与那覇栄蔵書記長は「二〇〇一年九月十一日のテロ発生時には、監督者の指示に従い適宜適切に行うとの回答は得ている、しかし、避難場所や緊急の連絡先など具体策はまだ示されていない」と話す。

　同本部には、緊急時の警備態勢が敷かれた場合の出勤態勢や避難場所などについての問い合わせが多い。「米同時多発テロ後のようにゲートで銃を突き付けられないか」などの不安の声も寄せられているという。

許可なく境界内に入るべからず／撮影の事前申請通達

　嘉手納基地報道部は十八日、マスコミ各社に対し、警備上の理由で、ゲート前の境界付近での基地撮影の事前申請を通達。イラク攻撃を間近に控え、基地警備に神経をとがらせている。米軍基地の警備態勢が強化されるに伴い、基地の内と外を隔てる「境界」の存在があらためて浮かび上がった。

　嘉手納基地の沖縄市側に通じる第二ゲート。境界はフェンスが立つ場所ではなく、沖縄自動車道のほぼ真下、ゲートから外側に約三十メートル離れた地点に「境界」を示す看板が立っている。

　十八日午前、ブッシュ米大統領によるテレビ演説の直後、その境界付近がにわかに緊迫化。境界を越えて基地内を撮影する報道陣を見つけた米兵が険しい表情で近づき、激しい口調で境界の外へ退去するよう求める場面が相次いだ。

　同基地報道部は、基地撮影の事前申し込みについて「許可なく境界内に入ってくると、ゲートでの警備が遂行できないため」と説明。イラク攻撃で緊迫度が増せば、基地警備がさらに強まり、住民生活への支障も懸念されている。

米軍機、５日間で１２２４回／平和委員会嘉手納監視

　県平和委員会は十八日、県庁で記者会見し、米軍嘉手納基地の監視行動で、今年二月二十四日から二十八日までの五日間に米軍機が千二百二十四回、飛行したと発表した。昨年同時期の調査に比べ二百七十五回増えており、同基地所属以外の外来機も多数確認。大城保英事務局長らは「北朝鮮やイラク情勢に連動した動きが見られる」と指摘している。

　調査は午前七時から午後七時まで、嘉手納基地を中心に行われた。この間、二分五十五秒に一回の頻度で米軍機が飛行。特に、午前九時から十一時の間が三百十一回で２５・４％を占め、総機種数は二十五種だった。Ｆ１５、Ｆ１６戦闘機の異機種同士の同時発進など、過去には見られなかった訓練もあったという。同委員会は「米軍機の頻繁な飛行で、近隣学校の授業に大きな影響を与えたと思われる」と懸念。その上で「航空宇宙遠征軍の指揮下に置かれた動きで、イラク攻撃に関連した」と分析している。

　
　球陽高生徒、人文字で反戦の意思示す

　【沖縄】差し迫るイラク攻撃に合わせ、反戦の意思を示そうと、沖縄市にある球陽高校の生徒が人文字をつくる計画を進めている。「戦争はいけないと思うだけで終わらせず、行動に移して表現しよう」と、２４日の本番に向け成功を目指す。戦争と平和を考える契機にしたいと、真剣な取り組みを続けている。

　きっかけは、昼食時間の会話の中で漏れた「平和だね」の一言。「でも、戦争が始まるかも」。次々と会話が進み、全校生徒に呼び掛け行動を起こすことがまとまった。

　開催は２４日の修了式後だが、準備は１７日に始めたばかり。つくる文字も未定で、約３０人のメンバーは、期間の短さやほかの生徒の反応の弱さに戸惑いを隠せない。

　１８日の準備会は、２時間を超える議論の結果、メンバーが全クラスを回って詳しく趣旨を説明するほか、イラク攻撃の賛否を問うアンケートを行うことを決めた。

　呼び掛けの中心になった喜屋武夏海さん（１７）は「短い時間で、自分たちから動こうと、ここまで変わるとは思わなかった。これだけでも意味があると思う」と、準備に追われながらも充実した表情。山城千弥（ちひろ）さん（１７）は「これまでは平和学習をしていても受け身だったが、今は自分で考え、行動しようとしている。賛同する人にぜひ参加してほしい」と、期待を込めた。

「攻撃に正当性なし」／米基地前で集会
平和的解決を訴え

　イラクの民衆を殺すな―。平和運動センター（崎山嗣幸議長）と北部、中部、浦添地区労は十九日午後、北中城村石平のキャンプ瑞慶覧第一ゲート前で「米国によるイラク攻撃を許さない緊急集会」を開いた。自治労や教職員組合、市町村職労のメンバー二百人以上が、基地に向かってイラク攻撃の中止を訴えた。

　崎山議長は「罪のないイラクの人たちが殺されるのを黙って見ていられない」と強調。中部地区労の松田寛議長は「なぜ今、イラク攻撃をするのかという理由が全く分からない。米国の攻撃を認めると、国連憲章で禁止されている先制攻撃の道を開くことになる」と述べ、平和的解決の必要性を訴えた。

　北中城村の喜屋武馨村長は「県内、国内、世界の世論は攻撃反対だ。それを無視する米国の行動を座視するわけにいかない」と指摘。「この空はイラクにつながっている。世論をもっと盛り上げて、攻撃をあきらめさせよう」と呼び掛けた。

　浦添市から参加した島袋由美子さん（６３）は「正義を振りかざすブッシュに殺されるのは、罪のないイラクの人たち。何とか攻撃を止めたくて参加した」。職場の休憩時間に掛けつけた宜野湾市の男性（３１）は「攻撃の理由がよく分からない。米国は、自分たちの考えだけを押し付ける行為をやめてほしい」と話した。

戦争回避を／県遺族会アピール

　県遺族連合会（座喜味和則会長）は十九日午前、「イラク問題の平和的解決を求める緊急アピール」を発表した。

　緊迫するイラク情勢を受け、「いかなる理由があれ、戦争は絶対に回避しなければならない」「地上戦を経験した県民遺族で構成する県遺族連合会は、平和の尊さを身にしみて痛感している立場から、イラクで戦争勃発（ぼっぱつ）してはならないと訴える」としている。

平和解決を求め意見書／本部町議会

　本部町議会（仲村幸松議長）は十九日午前、開会中の三月定例会で「イラク問題の平和的解決を求める意見書」を全会一致で可決した。

ジュゴン保護を明記／在日米軍の環境規範

　在日米軍の施設・区域内での環境規範で、二〇〇二年六月に更新された「日本環境管理基準」（ＪＥＧＳ）でジュゴンが絶滅危ぐ動物リストに掲載され、保護のための合理的な手段が講じられるべき対象となっていることが十八日、明らかになった。参院予算委員会で岩佐恵美氏（共産）に対し、環境省環境管理局の西尾哲茂局長が答えた。

　ＪＥＧＳは在日米軍が一九九五年に国内法に代わる独自の基準として作成。ジュゴンは日本側の要請で、二〇〇一年十月の改定でリストアップされていた。

　また、米国防総省が国外の米軍施設を対象に二〇〇〇年にまとめた「海外環境基本指針」でも、東アフリカから日本南部に生息するジュゴンを保護対象としている。

　米軍普天間飛行場代替施設建設に伴うジュゴンへの影響について、川口順子外相は「環境影響評価を実施し、代替施設建設による環境への影響を最小限にとどめるための適切な対策を取っていく」と答弁。鈴木俊一環境相は「（ジュゴンの）広域的調査の結果を踏まえて、種の保存法や鳥獣保護法に基づく保護対策などでしっかりと対応していきたい」と答えた。

　ＪＥＧＳでは、訓練区域における絶滅危ぐを含む天然資源の保護について「訓練によって否定的影響をうける地域においては、影響の回避、軽減措置が始められるべきである」と規定。悪化した地域に強い影響を及ぼす訓練の制限などの措置も盛り込んでいる。

　環境省は昨年九月の環境分科委員会で、浅場の海草藻場での訓練実施に際し、ジュゴンへの影響を最小限にするよう米側に要請。米側から「ジュゴンに影響を与えないように努力する」との回答を得たという。